【図で理解する】不等率とはどのようなものか

2021年8月19日

目的

電験三種では「需要率・負荷率・不等率」の三つの率について問われ,下記の如く定義されるが,「不等率」は他の「負荷率」や「需要率」に比べなかなか理解しがたい。

 負荷率:平均需要電力[kW]/最大需要電力[kW]

 需要率:最大需要電力[kW]/設備容量[kW],

 不等率:各負荷の最大需要電力の和[kW]/合成最大需要電力[kW]

本記事では,なかなか理解しがたい「不等率」について図を用いて簡潔に説明すると共に,不等率が大きいこと(もしくは小さいこと)がどのような意味を有しているのかも併せて示す。

不等率 (Diversity factor)とは

不等率を説明する上で欠かせないのが,給電対象となる需要設備が2つ以上ある状況が前提となる。例を挙げるとすれば,下記の図のように需要設備A, B, Cに対して発電機から変圧器を介して給電しているシチュエーションである。

上図を確認しながら,参考書に記載された以下の説明を読むと何となく理解できるように思えるが,需要率と負荷率も同じタイミングで学習すると,かなりの人が混同してしまうのではないだろうか。

変圧器から各需要設備に対して給電しているシチュエーションを考えた際,個々の需要設備の最大電力が同じ時刻に発生するとは限らないことから,各需要設備の最大需要電力を合計したものは,需要設備全体における最大電力より必ず大きくなる。
この割合を示すものが不等率である。

そこで横軸に時間,縦軸に電力[kW]のグラフにて考える。需要設備が2つあることを仮定し,それぞれの需要設備が消費する電力を示す山を二つ描く。個々の山の高さをPa,Pbとし,二つの山を合わせた時の一番大きな山の高さをPcとすると,不等率は(Pa+Pb)/Pcにて表すことが出来る。

「左図:それぞれの需要設備が消費する電力,右図:各需要設備の消費電力の合成」

また,上図と共に以下の3点を留意しておけば,他の需要率や負荷率と混同せず,不等率を導くことが出来ると考える。

 ・ グラフにて需要設備の消費電力の山を二つ以上描くこと

 ・ 不等率は,合成した需要電力と個々の需要電力の比較であること

 ・ 需要率の値は1以上となること

不等率が大きいこと,小さいことが示す意味について

不等率が大きいほど,給電を受けている各需要家の需要電力の最大が分散されていることを意味しており,発電施設や変圧器などについては,省コスト(エコ)な設備を選定することが出来る。

また,不等率が小さい(1に近いと)ことは,各需要設備が必要とする電力を積み上げた値と合成最大需要電力が近くなり,各需要家の需要電力の最大が特定の時間帯に集中していることを意味している。

つまりは,給電対象の需要電力を積み上げた容量に近い設備を選ぶ必要があることから高コストとなる。

冒頭の図に示した需要設備が3つ(A, B, C)ある状況において,各需要設備の需要電力の最大が集中している場合,そこそこ集中している場合,分散している場合の3種類を不等率と共に以下にグラフで示す。

(なお,力率は全ての設備及び場合において共通の値とする。)

「各需要設備の需要電力の最大が集中している場合」
「各需要設備の需要電力の最大がそこそこ集中している場合」
「各需要設備の需要電力の最大が分散している場合」

 

以上から各需要設備家の需要電力の最大が分散している場合が変圧器の容量を一番低く抑えられることが理解頂けたと思う。

参考文献

電験第3種 これだけシリーズ⓸ 法規 (時井 幸男著,電気書院)