エアコン冷却原理図の描き方
本記事の目的
どうしてエアコンが部屋を冷やしたり,暖めたり出来るのか。
この疑問に対する説明は書籍やサイトで至るところに掲載されており,
誰もがアクセスすることが出来るが,その中でどれだけの人が納得し,
他の人に教えられるだけの知識を習得することが出来るのだろうか。
少なくとも筆者としては,それらの説明があまりも洗練され過ぎているため
納得するのに時間がかかった。
(単に筆者が物分かりが悪いのかもしれないが。)
物事を理解するにはアウトプットするのが一番であり,エアコンの原理を説明するには
冷却/加熱の仕組みを絵で描くのがベストと考える。本記事では誰もが知っているエアコンの動作といくつかの物理法則から
エアコンの冷却原理図の描き方を説明する。この記事を通じて冷房の原理が納得頂ければ幸いである。
エアコンの冷却原理図を描いてみる
エアコンの構成について
まず,エアコン(冷房)はどのような装置なのかを振り返ってみよう。
真夏の暑い日,冷房をつける前の部屋の温度と外の温度はほぼ同じである。
冷房を付けると部屋のユニット(室内機)からは冷たい風が流れ,
そして,屋外に設置されている室外機からは暑い風が出てくる。
暫くすると部屋は快適な温度になるのである。
上記のエアコンの動作と「熱は高いところから低いところに伝わる」という法則から
屋内と屋外には熱交換するための装置(熱交換器)が設置され,
屋内のは温度が低くなり,屋外のは温度が高くなることが考えられる。
これまでの考えをイメージ図で整理すると以下の通りとなる。
どうして冷えるのか/温まるのか
次にどのような仕組みで屋内の熱交換器は冷え,屋外の熱交換器は温まるのかを考える。
「屋内の熱交換器に氷を入れれば,部屋の温度を下げられるよね?」と
答える人もいるかもしれないが,残念ながら定期的に氷補充することはしていない。
よって,その答えは現状のエアコンの仕組みには当てはまらない。
(ただ,冷蔵庫では1950年代くらいまそういう仕組みのものが一般大衆向けだった)
ご存知の通り,部屋のエアコンを動かすのに絶えず供給しているのは電気のみである。
では,どのようにしたら,冷たいものを供給せず,室内の熱交換器を冷やせるのだろか。
答えは簡単であり,エアコンの中で冷たいものを作り続けてあげればよいのである。
また,少し乱暴な考えかもしれないが,電気を送るだけで,何らかの目的が達成できるのは,何らかのサイクルが働いているからだと予想される。よって,「熱は高いところから低いところに伝わる」という法則から,冷たい流れが屋内の熱交換器に供給され続け,温かい流れが屋外の熱交換器に供給され続けるサイクルがイメージ図として描ける。
続いて冷たい流れを屋内の熱交換器に供給し続け,温かい流れを屋外の熱交換器に供給し続けるためには,
冷たい物と温かい物を作り続けなくてはならない。
これに用いられる二つの物理法則は
・ 断熱膨張(熱消失) ⇔ 断熱圧縮(熱発生)
・ 気化熱(熱消失) ⇔ 凝縮熱(熱発生)
である。
ちなみに断熱膨張,断熱圧縮の定義は以下の通りである。
断熱圧縮,断熱膨張とは…
気体を断熱的に圧縮,膨張させることである。
“気体は一般に、周囲からの熱の出入りがなくても体積が膨張すると温度が下がる。
この現象を断熱膨張といい、体積を圧縮すると温度が上がる現象を断熱圧縮というが、
このような変化を断熱変化という。
これは圧縮するときにした仕事が圧力エネルギーと熱エネルギーに変換され、
エネルギーが保存されるからである。"
断熱圧縮に関する動画…
https://www.youtube.com/watch?v=5dkiWRkiYFM
気化熱,凝縮熱とは…
蒸発熱(じょうはつねつ、英語: heat of evaporation)または気化熱(きかねつ、英語: heat of vaporization)とは、
液体を気体に変化させるために必要な熱のことである。
固体や液体が気体に変化する現象を気化という。気化にはエネルギーが必要である。
物質が気化するとき、多くの場合、気化に必要なエネルギーは熱として物質に吸収される。
気体が液体に変化するときに放出される凝縮熱の値は、同じ温度と同じ圧力の蒸発熱の値に符号も含めて等しい。
断熱膨張・断熱圧縮を利用した冷却
まず,断熱膨張・断熱圧縮を利用したサイクルに注目する。
エアコンの動作としては,室内機で冷風を発生し,室外機で温風を発生させるので
室内機の手前で断熱膨張(熱消失,冷やす)させて,
室外機の手前で断熱圧縮(熱発生,温める)させる必要がある。
上記を満足させるには,室内機への流れの手前で圧縮機(コンプレッサー)を設け,
室外機への流れの手前で膨張弁を設ける必要がある。
ここまでで次のイメージ図が描ける。
凝縮熱・気化熱を利用した冷却
更に凝縮熱・気化熱を利用したサイクルに注目する。
前述の通りエアコンの動作としては,室内機で冷風を発生し,室外機で温風を発生させるので
室内機で気化(熱消失,冷やす)させて,
室外機で凝縮(熱発生,温める)させる必要がある。
様々な条件(想定される外気温度や目標温度,コンプレッサー吐出圧力など) を考慮しながら
冷媒による熱の運搬が効率的に出来るように,上記の状態変化を然るべきタイミングで発生させるように
エアコンメーカーの方々は冷媒選定をされているのでしょう。(筆者の想像です)
以上を踏まえると冷却サイクルのイメージ図が完成する。
また,各点における圧力,温度,冷媒の状態を表に纏めたので併せて示す。
No | 冷媒に対する操作 | 圧力 | 温度 | 状態 | 備考 |
① | 断熱圧縮後 | UP | UP | 気体 | – |
② | 温度交換器での熱排出 | UP | UP->MID | 気体 -> 液体 | 凝縮熱排出 |
③ | 熱交換器での熱排出完了 | UP | MID | 液体 | – |
④ | 断熱膨張後 | DOWN | DOWN | 液体 | – |
⑤ | 温度交換器での熱吸収 | DOWN | DOWN->MID | 液体 -> 気体 | 気化熱吸収 |
⑥ | 熱交換器での熱吸収完了 | DOWN | MID | 気体 | – |
なお,エアコンで暖房運転する時は上記と逆の運転をしてやればよい。
(屋外の熱交換器で熱を吸収し,屋内の熱交換器で熱を排出させる。)
まとめ
エアコンは圧縮機一つ,膨張弁一つ,熱交換器二つで構成されており,
屋内熱交換器では断熱膨張+気化による熱吸収,屋外熱交換器では断熱圧縮+凝縮による熱排出
をサイクルとして連続的に働かせることで冷却サイクルが働く。
参考文献
Weblio:断熱圧縮について
https://www.weblio.jp/content/%E6%96%AD%E7%86%B1%E5%9C%A7%E7%B8%AE
株式会社Apiste様「冷却の原理について」
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません