単巻変圧器の等価回路から自己容量Ps及び線路容量Plの関係式を導出するには
記事の目的
単巻変圧器の等価回路から自己容量Ps及び線路容量Plの関係式を導出する過程を示す。
また,昇圧変圧器と降圧変圧器では,一見その関係式が異なるが,実際の数値を代入することで
同様の結果が得られることを示す。
単巻(たんまき/たんかん)変圧器とは
一次巻線と二次巻線に共通な部分を持つ変圧器のことである。
共通な部分を分路巻線,共通ではない部分は直接巻線と呼ぶ。
等価回路は下図の通りである。
左側が昇圧変圧器,右側が降圧変圧器の等価回路となる。
この変圧器が使用される用途の例は以下の通りである。
・ボルトスライダー(スライダック)
・交流電動機の始動補償器(オートトランス)
・配電線の電圧降下を保証するための昇圧器
変圧比a,自己容量Ps及び線路容量Plの関係式を導出するには
単巻変圧器の変圧比,自己容量及び線路容量の三つの変数より関係式が成立する。
よって,二つの変数が分かれば,三つ目の変数を計算にて求めることが出来る。
関係式は昇圧変圧器と降圧変圧器とで異なるが,等価回路から同じように導出できる。
なお,変数は以下の通り定義する。
一次電圧:V1
一次巻線の巻数:N1
一次電流:I1
二次電圧:V2
二次巻線の巻数:N2
二次電流:I2
変圧比:a
<昇圧変圧器の場合>
回路図より自己容量,線路容量及び変圧比が以下の式で表される。
Pl=V2I2 … 線路容量の式
Ps=V1(I1-I2)=(V2-V1)I2 … 自己容量の式
a=V1/V2=N1/N2=I2/I1 … 変圧比の式
上記の数式より自己容量の数式が以下の如く数式展開され,
線路容量と変圧比により求めることが出来る。
Ps=(V2-V1)I2
=V2I2(1-V1/V2)
=Pl(1-a)
<降圧変圧器の場合>
回路図より自己容量,線路容量及び変圧比が以下の式で表される。
Pl=V2I2 … 線路容量の式
Ps=(V1-V2)I1=(I2-I1)V2 … 自己容量の式
a=V1/V2=N1/N2=I2/I1 … 変圧比の式
上記の数式より自己容量の数式が以下の如く数式展開され,
線路容量と変圧比により求めることが出来る。
Ps=(I2-I1)V2
=V2I2(1-I1/I2)
=Pl(1-1/a)
<導出した関係式を例を挙げて検証>
昇圧/降圧変圧器の自己容量は以下の通り線路容量と変圧比より求められた。
Ps=Pl(1-a) … 昇圧変圧器
Ps=Pl(1-1/a) … 降圧変圧器
仮に100V/220Vの昇圧変圧器であれば,
Ps=Pl(1-100/220)
=Pl*(6/11)
にて自己容量を求められる。
また,同じ変圧器に対し,一次電圧と二次電圧を逆に接続した場合は
220V/100Vの降圧変圧器となり,次の式で自己容量を求められ,
昇圧変圧器と同じ結果となる。
Ps=Pl(1-1/(220/100))
=Pl(1-100/220)
=Pl*(6/11)
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