【F種Bライズとは何か?】耐熱クラス(絶縁階級)について説明する
目的
本記事では電動機の仕様である耐熱クラス・絶縁階級(例:F種Bライズ)とは何かを簡潔に説明する。
耐熱クラス・絶縁階級について
電動機に限らず,電気機器は電気が意図せぬ箇所に漏電しないよう絶縁体で覆われている。絶縁体は使用環境の温度(熱)により経年劣化する。十分な期間,機器が仕様通りのパフォーマンスで運転できるよう機器設計・選定をする際には絶縁体の選定と温度上昇を考慮が必要であり,その時に使用するのが耐熱クラス・絶縁階級という指標である。
耐熱クラス(例:F種Bライズ)が示す意味➀
F種は電動機に使用されている絶縁材料の許容温度を示し,Bライズは定格負荷で運転した際における電動機内の温度上昇が静定する温度である。下表が絶縁体の耐熱クラスであり,階級と許容温度が定められている。
*含侵(がんしん):布や紙・木材などに、薬品・樹脂や水などの液体を浸して含ませること。
また,F種Bライズの電動機を定格負荷で運転した際における時間と温度上昇の関係を以下のグラフにて表す。周囲温度が40℃の状態で電動機を運転し,時間と共に温度が上昇する。一定時間が経過すると130℃にて静定する。
電動機の絶縁材料はF種の物が使用されているため許容温度は155℃となるが,130℃までしか上昇しないので25℃のマージンが存在することになる。
耐熱クラス(例:F種Bライズ)が示す意味➁
では,この25℃のマージンがあることで何が良いのか。この理由として温度に対する寿命が圧倒的に伸びることになる。アレニウスの法則に基づき、化学変化(経年劣化)は温度が上がることで加速され、温度が下がれば減速される。以下はIEEE 117にて示された温度と寿命を示したグラフである。
F種(Class:F)で寿命を見てみると,155℃では寿命が20,000時間(2年と少し)であるのに対して,130℃で使用した場合は寿命が100,000時間(約11.5年)となり,5倍も寿命が伸びることになる。つまり、F種Bライズは,絶縁体の許容温度に対し,十分に余裕を持った材料選定と機器設計にしていることから,長寿命な仕様であると言える。
参考文献
NEKDA FALL MEETING OCTOBER 2014
Kiln motor recommendation, maintenance and repair savings (Presented by: Eric Bourque)
https://www.esf.edu/nekda/documents/Kilnmotorrecommendationmaintenanceandrepairsavings-NEKDAFall2014-EricBourque.pdf
絶縁材料の耐熱区分とその評価試験法の動向(田中 祀捷様,電力中央研究所)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejjournal1888/105/12/105_12_1174/_pdf
別表第十一 電気用品に使用される絶縁物の使用温度の上限値(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/kaishaku/gijutsukijunkaishaku/beppyoudai11.pdf#search=’beppyoudai11.pdf'
電動機の零相電流分析による絶縁劣化兆候検出手法の研究 (早稲田大学)
https://core.ac.uk/download/pdf/144449519.pdf
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません