【実例と経緯で解説】リスト規制,キャッチオール規制とは
目次
そもそもリスト規制とは
リストに記載された貨物/技術を輸出/提供する際には経済産業大臣の許可が必要となる規制である
リスト規制の目的
平和を乱す恐れのある国へ武力(兵器)を与えるのを防ぐため
リストに記載された貨物/技術(大量破壊兵器や兵器の開発などに用いられる恐れの高い物)
の輸出、技術の提供を審査することで,武力を他国に持たせないようにするため
リスト規制が日本で施行されるまでの流れ
元々はココム(COCOM=対共産圏輸出統制委員会)が前身だったが,ソ連崩壊による冷戦終結により1994年に廃止。日本も参加していた。
その後,ココムの後を継ぐ形で"ワッセナー・アレンジメント"が96年7月に設定。11月に発効。日本も設立時から参加。
“ワッセナー・アレンジメント"では、特定の対象国・地域に的を絞らず、全ての国家・地域及びテロリストの非国家主体も対象とした。
これは,参加国間の紳士協定であるため、法的拘束力を有さないものであった。
そこで日本政府は、ワッセナー・アレンジメントでの合意等に基づき,外国為替及び外国貿易法改正により経済産業省を窓口とし、国内の輸出を管理することとし,これがリスト規制となったのでしょう。
(赤字はリスト規制が規定されるまでの明確な情報源を得られなかったので一部筆者の推定が入っています)
リスト規制の対象となる品目
経済産業省の安全保障貿易管理のHPに記された下記品目がリスト規制の対象である。
1.武器 2.原子力 3.化学兵器 3の2.生物兵器
4.ミサイル 5.先端素材 6.材料加工
7.エレクトロニクス 8.電子計算機 9.通信
10.センサ 11.航法装置 12.海洋関連
13.推進装置 14.その他 15.機微品目
上記品目を見てみると,8項の電子計算機が一般人が利用しているパソコンと関連しそうに思えるが,この規制にひっかかる対象の仕様(経済産業省HP内にあるExcelに記載)の一部を抜粋すると以下の通りである。
イ 85度を超える温度又は零下45度より低い温度で使用することができるように設計したもの
ロ 放射線による影響を防止するように設計したものであって、次のいずれかに該当するもの
(一) 全吸収線量がシリコン換算で5,000グレイを超える放射線照射に耐えられるように設計したもの
(二) 吸収線量がシリコン換算で1秒間に5,000,000グレイを超える放射線照射により障害を発生しないように設計したもの
(三) 単事象障害によるエラー率が1日当たり1億分の1毎ビット未満となるように設計したもの"
経済産業省の安全保障貿易管理
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/matrix_intro.html
イ項から室温での使用が推奨されている一般用途のPCには到底当てはまらないことが分かる
また,ロ項はそもそも一般用途のPCには耐えられる放射線量の規定すらない。
このようにリスト規制とは一般用途として用いられるものとは一線を画すものが対象であることが分かる。
では,キャッチオール規制とは
リスト規制ではハイレベルな技術、製品の輸出を規制しているのに対し,
キャッチオールはリストに載っていないハイレベルでは無い技術・品目も兵器の開発などに用いられる可能性があると判断される場合は経済産業大臣の輸出許可が必要となる。
(リスト規制の補完をする位置付け)
例えば、市販パソコンを輸出しようとした場合、多くの機種はリスト規制の対象には無らないが、キャッチオール規制の対象にはなるため、経済産業大臣の許可が必要となる。※
※但し,ホワイト国(以下)に輸出する場合は,許可なしで輸出が可能となる。
この記事を記載した2019年7月現在,大韓民国がフッ化水素を非ホワイト国に輸出した疑いでホワイト国から外す動きがあるため赤字で記載しております。
ホワイト国:「輸出令別表第3」の地域(2019/7/14 経済産業省より抜粋)
アルゼンチン,オーストラリア,オーストリア,ベルギー,ブルガリア
カナダ,チェコ,デンマーク,フィンランド,フランス,ドイツ,ギリシャ
ハンガリー,アイルランド,イタリア,大韓民国,ルクセンブルク
オランダ,ニュージーランド,ノルウェー,ポーランド,ポルトガル
スペイン,スウェーデン,スイス,英国,アメリカ合衆国
キャッチオール規制の対象となる品目
ざっくり言えば,動物,植物,食品,嗜好品,革製品,木材,自然繊維は対象外だが
それ以外の品目は対象となり,殆どの輸出品目は対象となる。
(詳細は下記HPを参照のこと。)
具体例を挙げれば,ネジ一本,ゴムパッキン1個,ガラス1枚,ポリエチレンなど身の回りにある材質もキャッチオール規制の対象となるのである。
もし,韓国が非ホワイト国になれば,どのような影響があるのか?(2019年7月)
これまでキャッチオール規制対象品を韓国に輸出するのは,は経済産業大臣の許可が不要であったが,今後,ネジ1本でも輸出する際には,経済産業大臣の許可が必要となることになるのでしょう。
参考URL
安全保障貿易管理(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/anpo02.html
ワッセナー協約(コトバンク)
https://kotobank.jp/word/%E3%83%AF%E3%83%83%E3%82%BB%E3%83%8A%E3%83%BC%E5%8D%94%E7%B4%84-163581
ワッセナー・アレンジメント(Wikipedia)
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%83%E3%82%BB%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88
輸出規制(フルカワエレクトロン)
http://www.bea.hi-ho.ne.jp/furukawa-ele/contents4.htm
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