【過去問の解答と解説】機械保全技能検定 3 級 (電気系)学科試験問題(平成30年 追試験)を解いてみた
記事の目的
本記事では国家検定である機械保全技能検定3級(平成30年 追試験)の学科試験の解答と簡単な解説を掲載する。
3 級 機械保全技能検定 学科試験問題(平成30年 追試験)の解答と簡単な解説
1 旋盤は,工作物を主軸に取り付け,切削工具を回転させながら切削加工を行う工作機械である。
答え:×
旋盤(せんばん、英: lathe)は削られる対象物を固定し回転させ,固定されている刃物(バイト)に当てることで切削加工をする工作機械である。1780年にイギリス人のヘンリー・モーズリ―が発明したのが最初と呼ばれる。
2 回路の電流値を測定するときは,測定回路に並列に電流計を接続する。
答え:×
電流を計測するには回路に対して電流計を直列に接続するべきである。
3 直流回路に電流Iが流れるとき、抵抗Rで消費される電力Pは、P=RI2で求められる。
答え:〇
抵抗Rに電圧Vがかかり,電流がI流れているのであれば,電力Pは,P=V・Iにて求められる。V=I・Rにて求められるので,P=RI2は正である。
4 炭素鋼の炭素含有量は、鋳鉄より少ない。
答え:〇
炭素の含有量が0.02%以下のものを純鉄,0.02-2.1%のものを鋼,2.1%以上のものを鋳鉄と呼ぶ。鋼は炭素以外のクロムやモリブデンなどの合金元素が加えられているか否かで2つに分けることができ,合金元素を特に加えていないものが炭素鋼,加えているものが合金鋼となる。
機械設計を行う上でよく知られている炭素鋼は一般構造用圧延鋼材,いわゆる「SS材」とよばれるものである。例えば,SS400は「400」という数値が示されており,JISにおいては400MPa以上の引張強さを持つ鋼材であると規定されている。
5 位置決め制御におけるフィードバック制御は,制御対象の現在位置や速度などの状態を検出し,位置決めを行う制御方法である。
答え:〇
位置決め制御におけるフィードバック制御は,制御対象に対して指定位置になるよう
変位目標と現状位置の差分を元にPID制御などを行う。
目標値に早く収束させるために制御対象の速度(変位を時間で微分)も制御要素として扱う。
6 管理のサイクルとは、Plan→Do→Action→Check の順に繰り返し回すことである。
答え:×
管理のサイクルはPDCAである。Plan -> Do -> Check -> Actionである。
1950年頃から日本企業に浸透し始めたのが起源である。PDCAに囚われていることが今の日本の低成長の原因の一つであるとの説もある。
7 自動工具交換装置は,数値制御工作機械において,工具マガジンなどから必要な工具を選択し,自動的に交換する装置である。
答え:〇
自動工具交換装置はATC(Automatic tool changer)と呼ばれる。
ATCには主として,(1)タレット式と(2)マガジン式の2種類がある。
1940年代にアメリカでNC(数値制御)が開発され,工作機械をハンドルで動かす時代からNCプログラムで動かすことができるようになり,機械加工の自動化が始まった。
しかし,製品を完成させるには平面加工,溝加工,穴あけ,ねじ加工など色々な形状に削る必要があり,複数の切削工具を使用することから,NCが開発された当初は加工形状に合わせて,人が切削工具を取り代えていた。
切削工具の交換のため,人が工作機械につく必要があり,完全な自動化とならなかったのでそこで開発されたのがATC(自動工具交換装置)である。
8 ウォータハンマ(水撃現象)の発生を防止する方法の 1 つとして,弁をできるだけ急速に閉めることが挙げられる。
答え:×
ウォーターハンマーは圧力の急激な変化で誘発されることから,弁を急速に閉めることがウォーターハンマーの発生につながる。
9 パレート図は,棒グラフと折れ線グラフを組み合わせたグラフで,不適合などの項目とその割合を視覚的に把握することができる図である。
答え:〇
パレート図は、項目別に層別して、出現頻度の大きさの順に並べるとともに、累積和を示した図である。
とある製品の不適合をその要因別に分類し、その件数順に並べてパレート図を作ると不適合の重点順位がわかる。
10 設備履歴簿に,故障が発生した日付やその状況を記録しておくことにより,故障傾向の分析に利用することができる。
答え:〇
設備履歴簿は以下の内容を記録する。
以下を計測する上で設備の故障分析や改修・更新の判断材料となる。
これらの記録を残すことは設備保全にとって大切な作業である。
●設備運転記録
●設備点検
●機械の故障及び補修記録
●設備の取得金額
11 摩耗故障期間とは,疲労・摩耗・劣化現象などによって,時間とともに故障率が大きくなる期間である。
答え:〇
工業製品における故障率の推移は一般的に下図のようになるといわれている。この図は正式には故障率曲線といわれるが,その形が浴槽(バスタブ)に似ていることから,一般にバスタブ曲線と呼ばれている。故障の発生率は製品を使用される期間内で一定ではなく、使用を開始した直後が高くなる傾向がある。
「初期故障期間」
工場からユーザーの自宅までの流通過程での取り扱いといった要因や,量産の初期段階における部品やユニットの品質ばらつき,組立工程における習熟度等が相まって発生する故障である。保証期間は,この時期の故障を保証する意味で設けられている。
「偶発故障期間」
初期故障期間を経て初期故障要因が除去・対策され,品質的に安定した状態に落ち着く。この時期の故障率は時間と無関係にほぼ一定となる。
「磨耗故障期間」
この期間に発生する故障は,部品・ユニットの寿命等により故障するもので,故障率が時間の経過と共に増加する。
12 5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の「整頓」とは,必要なものと不要なものを区分し,不要なものを置かないことをいう。
答え:×
整理 不要なものを捨てること
整頓 使いやすく並べて表示をすること
清掃 きれいに掃除をしながら、あわせて点検すること
清潔 きれいな状態を維持すること
しつけ きれいに使うように習慣づけること
13 電磁開閉器とは,電磁接触器にサーマルリレーを組み合わせたものである。
答え:〇
電磁開閉器はMS((Magnetic switch)と呼ばれ,電磁接触器とサーマルリレーを組み合わせたものである。
電磁接触器は電動機やヒーターの開閉に使用され,電磁力の力で接点の開閉を行う。
MC(Magnetic contactor)と呼ばれる。
サーマルリレーはヒーターエレメントとバイメタルにより構成され,電動機の過負荷などによる過電流を検知し,機械的に回路を遮断する装置である。
14 高周波焼入れは,表面を硬化して耐摩耗性を向上させるのに用いられる。
答え:〇
高周波焼入れとは,高周波誘導電流(IH:Induction heating)を利用して鋼材の表面だけを急速に熱し,急速に冷やすことで表面を硬化させる金属処理のことである。耐疲労度と耐摩耗性に優れ,歯車やシャフト,平板などの機械部品の焼入れに適している。
15 焼戻しは,焼入れをしたあとに適切な温度に再加熱し徐々に冷やすことで,鉄鋼材料に粘り強さなどを与える熱処理である。
答え:〇
焼戻しとは焼入れ又は焼ならしを行った鋼について,硬さを減少させ粘さ(ねばさ)を増加させる目的で行う熱処理である。以下の動画のリンクで示す通り,焼入れは対象物をよく加熱した後に冷却すると硬さを増加し粘さが減少する。
焼戻しは焼入れを行った後に,やや加熱した後に冷却すると硬さが減少し粘さが増加する。
16 サーミスタは,温度の変化により抵抗値が変化する。
答え:〇
サーミスタは温度によって抵抗値が変化する半導体センサである。
サーミスタはNTC(Negative temperature coefficient),PTC(Positive temperature coefficient)などがある。温度域によらず温度センサとして使用できるのはNTC型であり、温度が高ければ低い抵抗値、温度が低ければ高い抵抗値を示す。
17 日本工業規格(JIS)によれば,下図は「PNP 型トランジスタ」の電気用図記号である。
答え:〇
PNP型トランジスタは電流がエミッタからベース及びコレクタに流れる性質を持つ。
NPN型トランジスタは電流がコレクタ及びベースからエミッタに流れる性質を持つ。
18 リミットスイッチは,移動する機械各部の位置や,コンベア上を搬送されているワークの位置などを検出することができる。
答え:〇
リミットスイッチは移動する検知対象がレバーに対して接触した後,一定距離作用することでレバーが特定位置に達した際に接点信号にてその情報を出力する機器である。
19 ガラスとビニールをこすり合わせると,両者は互いに引き合う。
答え:〇
両者を擦り合わせると,ガラスはプラスの電荷を帯び,ビニールはマイナスの電荷を帯びる。
20 導体内を移動する電子の方向と,流れる電流の方向は同じである。
答え:×
電流はプラス極からマイナス極に流れ,電子はマイナス極からプラス極に流れる。
21 サーマルリレーは,電動機の過負荷や拘束状態の大電流による焼損を防止するために使用される。
答え:〇
サーマルリレーはヒーターエレメントとバイメタルにより構成され,電動機の過負荷などによる過電流を検知し,機械的に回路を遮断する装置である。
22 水晶発振回路は,規則的なパルスを発生させることができるため,コンピュータなどのデジタル回路を動作させるのに使用される。
答え:〇
水晶には圧電効果及び逆圧電効果がある。
圧電効果とは圧力を加えると,圧力に比例した分極(表面電荷)が現れる現象である。
また逆圧電効果とは,外部から結晶に電気を加えると結晶がひずむ現象である。
水晶の圧電効果と逆圧電効果によって,安定した周波数を生み出すことで水晶素子表面の電極から電気信号として再度取り出すことで,安定した周波数の基準信号が得られる。
23 入力をA、Bとした場合,論理回路におけるORは「A・B」で表される。
答え:×
AND(論理積)はA・B,AxBもしくはA∩Bにて表すことが出来,OR(論理和)はA+B,A∪Bで表せる。
24 倍率器は,電流計の測定範囲を広げるために用いる。
答え:×
倍率器(ばいりつき)は,直流電圧計の測定範囲拡大に使われる直流用測定範囲拡張器である。電圧計に直列に接続し電圧計にかかる電圧を低下させる抵抗器である。
分流器(ぶんりゅうき)は,直流電流計の測定範囲の拡大に使用する抵抗器で,電流計に並列に接続し,電流計に流れる電流を分流させて測定範囲を拡大する。 可動コイル形計器で計測できる電流値は制限があるため,大電流を測定する場合には分流器の使用が必須となる。
25 コンデンサの合成静電容量を大きくするには,コンデンサを並列に接続する。
答え:〇
抵抗を直列接続すると合成抵抗が大きくなり,コンデンサを並列接続すると合成静電容量が大きくなる。
26 抵抗器のカラーコードは,抵抗値や許容差などを表す。
答え:〇
以下図に示す通り,抵抗器に印字されるカラーは数値を示しており,
抵抗値及び精度を意味している。
27 一般的に,半導体は,温度が上がれば電気抵抗値が増加する。
答え:×
半導体は導体と絶縁体との中間的な性質を備え,温度によって抵抗率が変化する。
低温時ではほとんど電気を通さないが,温度が上昇するにつれて,電気が通りやすくなる。
28 ねじの呼びが同じであれば,並目ねじと細目ねじのピッチは同一である。
答え:×
細目ねじは並目ねじに比べてピッチは小さい。
一般的には並目ねじが使用されている。
29 三相誘導電動機の軸受部が異常に高温となる原因として,巻線の絶縁低下が考えられる。
答え:×
軸受部が異常に高温となる原因は以下の通りであり,巻線の絶縁低下は当てはまらない。
➀ 潤滑剤の過度の不足,または過多
➁ 軸受の取り付け不良
③ 軸受内部すきまの過小あるいは,荷重の過大
⓸ 密封装置の摩擦過大
⑤ 潤滑剤の不適
⓺ はめあい面のクリープ
30 消費電力 100W の電熱器を 30 分間使用したときの電力量は,360kJ である。
答え:×
100Wの電熱器を1秒使用すれば,その電力量は100Jであり,10秒使用すれば1000Jである。
30分は1800秒であることから,電力量は180000J≒180kJとなる。
引用先
機械保全技能検定試験
https://www.kikaihozenshi.jp/
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