電気系学科を卒業した筆者が約1年で甲種危険物取扱者試験に合格したので,その時の勉強の進め方と使用した教材を示す。
化学専攻ではないが,仕事の都合などで甲種危険物取扱者を目指す理系の方々の参考になれば幸いである。
筆者の受験動機
仕事を進めるうえで,電気以外の知識があれば,より深い理解を得ながら,楽しく業務に取り組めるのではないかと思ったからである。どうしても電気技術者が活躍するステージはモノづくりの場面の後半になることが多いため,電気分野以外の要素が否応なしに絡むことになる。
恐らく大体の職種の電気技術者は,同じ様な思いが多かれ少なかれあるのではないだろうか。
甲種危険物取扱者試験の受験資格について
【甲種危険物取扱者の受験資格】
対象者:〔1〕大学等において化学に関する学科等を修めて卒業した者
対象者:〔2〕大学等において化学に関する授業科目を15単位以上修得した者
対象者:〔3-1〕乙種危険物取扱者免状を有する者(実務経験2年以上)
対象者:〔3-2〕乙種危険物取扱者免状を有する者
対象者:〔4〕化学に関する修士・博士の学位を有する者
化学に無縁な筆者は,事前に乙種第3, 4, 5, 6類を取得し,〔3-2〕に該当することで受験資格を得ることが出来た。
別の記事にて乙種第3, 5, 6類の勉強方法を紹介しているので,興味のある方はご参照頂ければ幸いである。
勉強スケジュールと使用した教材について
甲種の受験資格を得るための勉強期間も含めて,約1年の期間をかけて甲種を取得することが可能である。筆者の勉強・受験遍歴は次の通りである。
2021/11: 乙4の勉強開始
2022/2 : 乙4受験
2022/3 : 乙3, 5, 6の勉強開始,範囲の把握をしたところで暗記作業中断
2022/5 : 乙3, 5, 6の勉強再開 (本格的な暗記作業)
2022/6 : 乙3, 5, 6受験
2022/8 : 甲種の勉強開始 (1類,2類の勉強含む)
2022/10: 甲種受験
甲種に特化した勉強を開始したのが8月初旬となる。試験日は10月末となり,勉強期間は約3か月弱であった。まずは,出題範囲を把握する必要があったので次の教材を揃えた。(
赤字の上3つはよく利用した教材)
電車や車の移動時間
佐藤先生のDVD講義を聞き流し,乙種に比べて難易度が高いと言われている「物理学及び化学」の出題分野を把握した。また,それまで勉強していなかった第1類,2類の危険物についても「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」の該当箇所を同様に電車や車の移動時間中に佐藤先生のDVD講義を聞き流すことで対応した。
朝起きてからの学習
佐藤先生のDVD問題集で「物理学及び化学」においてどの程度のレベルの解法や計算が求められるのかを把握した。
昼休みなどの隙間時間
佐藤先生のDVD講義にて第1類及び第2類の聞き流した。
九月及び十月の学習(甲種勉強:2/3か月目)
電車や車の移動時間
佐藤先生のDVD講義を聞き流し,「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」(乙種第1類~6類全て)及び「危険物に関する法令」を中心に学習した。(物理学及び化学は時々)
また,けみちるちゃんねるの"【乙種・甲種危険物取扱者】有機化合物分からない方はこちらへ"の動画もよく視聴した。
朝起きてからの学習
「物理学及び化学」では自分が苦手とする(不足している)知識が明らかになってきたので,その分野(pH計算,中和滴定)に対する集中的な学習を行った。これらは参考書"わかりやすい!甲種危険物取扱者試験 “を用いた。
また,佐藤先生のDVD問題集を用いて「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」及び「危険物に関する法令」学習を進めた。
昼休みなどの隙間時間
危険物甲種問題集 (りすさんシリーズ)Android アプリを用いて全課目の問題をひたすら解いた。
化学系学科を卒業していない人が甲種危険物取扱者試験に合格するには
筆者と同じように指定された乙類4つを揃え,受験資格を得る人は甲種の勉強開始と同時に以下を集中的に学習するのがベストであろう。
-「物理学及び化学」における自分が苦手とする範囲の把握と学習
– 「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」における未取得の類の学習
– 「危険物に関する法令」の学習 (乙種よりも問われる内容が少し詳細になる)
上記を一通り済ませてしまえば,あとは全体的にこれまでの復習を踏まえながら満遍ない学習を実施すればよい。
最初から甲種危険物取扱者を目標にしている人であれば,乙四類に合格した時点で,甲種の参考書をパラパラと流し読みすれば,時間さえかければ,難しい試験ではないことが分かるはずである。
高校で理系専攻だった人やエネルギー管理士試験に合格している人にとってみれば,「物理学及び化学」の難易度はそこまで高くないと感じる。
解法パターンをいくつか抑え,エタノールやアセトアルデヒドなどの有機化合物の化学式や官能基さえ覚えてしまえば,そこまで警戒する必要はないと感じた。
また,公論出版の甲種危険物取扱者試験には様々なパターンの問題が掲載されており,難解な問題が含まれているが,実際にそのような問題ばかりが試験に出題されるとは考えにくい。せいぜい出題されても1, 2題ではないだろうか。現に筆者の受けた試験では出題されることはなかった。
筆者は三か月弱程,甲種の勉強を行ったが,最後の一か月の学習は蛇足のようにも思えた。(自分のプライベートを充実させるのにその時間を充ててもよかった)
もし,「物理学及び化学」の分野に対し,筆者と同じような感想を持つ人であれば,2か月しっかり勉強すれば,合格点には十分到達する試験だと考える。
まとめ
甲種危険物取扱者は,自分の人生を大きく変えるような資格ではないものの,学習を通じて得られた知識は,かなり有用であると断言できる。
火災を防止するための知識や灯油や軽油などの危険物を扱うための知識が得られることから,特に設備の設計や保守の業務を行う電気・機械系技術者にはかなりお勧めの資格になるかと思う。(難易度も決して高くはない)
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