なぜ同期機の誘起電力はEo=4.44kfNΦなのかを導いた
本記事の目的
本記事では,同期発電機の誘導起電力の公式"Eo=4.44kfNΦ"を高校物理で習う"Eo=vBl"から導出してみたので,その過程を纏める。暗記が苦手な方,なぜこの公式になるのか疑問に思った方の参考になれば幸いである。
導出する対象"同期機の誘導起電力の公式"について
同期機に誘導される電圧は,下記公式より求められる。
Eo=4.44 k fNΦ
k : 巻線係数
N: 全巻数
f : 電気周波数[Hz]
Φ:1極あたりの磁束数[Wb]
同期機の簡易モデルを描く
イメージを掴みやすいよう同期機の簡易モデルを描く。正面図を及び側面図は下図の通りとなる。
2極の磁石を回転子,上下を通る導体は固定子に施された電機子巻線と見なす。
回転子は中心Oを回転軸として時計周りに回転する。
同期機簡易モデルにe=vBmlを当てはめる
高校物理で学習する起電力公式①にて巻線に生じる起電力eを表すことが出来る。
e=vBmL … ①
e: 起電力 [V]
v: 相対的な電機子巻線の回転速度 (実際には回転子が回転) [m/sec]
Bm: 磁束密度 [wb/m2]
L: 電動機の厚み [m]
次に下記a,b,cの数式の関係から式変形し,②が導出される。
v=rω … a (円運動の速度に関する公式)
ω= 2πn … b (角速度と回転数の関係)
r=D/2 … c (半径と直径の関係)
e=πDnBml … ②
r : 電動機の中心から固定子巻線までの半径 [m]
D: 電動機の中心から固定子巻線までの直径 [m]
ω: 相対的な電機子巻線の角速度[rad/sec]
n: 電動機1秒あたりの回転数 [rps]
次に電機子巻線の両端に発生する起電力Emは,③で表すことができる。
Emは最大起電力となる。図で表すと上部と下部の巻線それぞれに対し,起電力が発生することから両端に発生する起電力は2倍する必要があることが分かる。
Em = e・2k・N … ③
k : 巻線係数 (固定子に対する巻き方により可変)
N: 全巻数
次に②,③をd,eの関係から式変形すると,④が導出される。
πD=pτ … d (円周と極数・極ピッチの関係)
n=f/(p/2) … e (回転数,電気周波数及び極数の関係)
Em =πDnBml・2k・N … ③に②を代入
=pτf/(p/2) Bm l 2k N
=4k Nτf Bm l … ④
τ : 極ピッチ [m]
p : 極数
磁束密度Bmは,回転子の磁極が固定子に最接近した時の最大値となる。
ここで,磁束密度の瞬時値Btを正弦波とみなすと下記で表せる。
Bt=Bm sinωt
次に瞬時値Btの平均値をBとすると最大値Bmと平均値の関係は
Bm=(π/2)B
にて表すことが出来ることから④は式変形することが出来,⑤が求まる。
Em=4k Nτf Bm l … ④
=4k Nτf (π/2)B l … ⑤
また,回転子が回転した際における磁極一つあたりの磁束Φは,Φ=τ・l・Bにて表すことが出来るので,⑤を式変形すると⑥が求まる。
Em=4kNf(π/2)Φ
= 2πkNfΦ … ⑥
最後にEmは最大値であることから,実効値Eを求めるには,⑥式を√2で割ることで求まる。
E=Em/√2
=√2・πkNfΦ
=4.44kNfΦ
参考文献
発電機と電動機(1) 誘導起電力と電磁力 公益社団法人 日本電気技術者協会 様
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